6月19日に震度6弱、20日に震度5強を相次いで観測した石川県の能登地方では、2020年12月ごろから地震活動が活発な状態が続いていて、震度1以上の有感地震は7月19日までで188回に上っています。活動の原因について、政府の地震調査委員会は7月11日、「地下にある流体が関与した可能性がある」との見解を発表しました。原因は何なのか、そして地震はいつまで続くのか、研究の最前線を取材しました。

異例の見解「流体が関与か」

政府の地震調査委員会は、7月11日に開いた定例会合で、能登地方の地震活動について国立大学の研究者も交え、重点的に議論しました。

全国の研究者とリモートで繋いで開かれた地震調査委員会

会合後の記者会見で平田直委員長は、地震活動の原因について「流体が関与している可能性が考えられる」と述べ、初めて地下に水のような流体が存在する可能性に言及しました。委員長自らがこうした見解を公表するのは異例です。

「流体」指摘していた専門家

この流体に早い段階から注目していた専門家がいます。

取材に答える平松教授=15日

金沢大学の平松良浩教授は、地殻変動や電磁気の観測データから、1年前から流体の存在を指摘していました。

11日の会合にも出席した平松教授は、調査委員会での分析について「いくつかの可能性がある中で、少しその可能性の範囲が絞られつつある、そういう段階まで来たのだなと感じている」と話しました。

平松教授は京都大学防災研究所の西村卓也准教授らと共に、珠洲市周辺でGNSS(GPSなどの衛星測位システム)を使った地殻変動の観測を続けていて、地盤が数センチ隆起する地殻変動を捉えていました。

さらに2021年11月からは、珠洲市と、隣接する輪島市・能登町で、地下の電気伝導度を調べる観測調査を行いました。京都大学防災研究所の吉村令慧教授が観測データを解析した結果、震源の近くに電気を流しやすい領域があることがわかり、流体が存在する可能性が高まっています。​

平松教授らが考える珠洲の群発地震のメカニズム

平松教授らは、こうした解析結果から、珠洲市の地下10キロから15キロ前後に“水のような流体”が存在し、流体が地下にある複数の断層面に流れ込むことで、地震を引き起こしていると考えています。

有感地震6万回超「松代群発地震」とは

地下の流体が原因とされる群発地震は初めてではありません。

国内で代表的なのは、1960年代に始まった長野県の松代群発地震です。身体に感じる「有感地震」は6万回を超え、地震活動が活発な状態は5年半もの間続きました。

群発地震で倒壊する住宅=長野県、1966年

松代群発地震では液状化現象も確認されていて、平松教授は、流体の関与が考えられる点では、珠洲の群発地震と共通していると話します。その一方で、珠洲の地震の震源はおおむね深さ10キロ~20キロの間で起こるのに対し「松代の群発地震は10キロより浅い所で起こっていて、地震の回数も珠洲よりももっと多い」と、異なる点もあるといいます。

珠洲でも震源が浅くなっている?

しかし、珠洲の地震でも震源が徐々に浅くなっているのではないか。11日の地震調査委員会の会合で、東北大学が提示した資料によりますと、震源の深さが、時間の経過とともに徐々に浅い地域にも広がってきていることが分かりました。

東北大学が提示した資料 震源の深さが浅い地域(上)にも広がっている

資料を目にした平田委員長は「非常に精密で、専門家が見ると驚くほど。地表の地質図に匹敵するくらいの空間分解能がある」と評価しました。そのうえで「1つの考え方は、地殻の深部から流体がだんだんに浅い所に移動してくる。深さが最初のうちに比べて1年~2年たつと、浅い所でも起こるようになっている。流体が関与している1つの証拠だ」と述べました。

しかし、この流体の移動が地震にどう関係するのか、委員会で結論は出ませんでした。