鹿児島県観光連盟は今、若い世代向けの新しい観光パンフレットの製作を進めています。カメラマンに起用されたのは、奄美大島出身の23歳のフォトグラファーの女性で、その美しい写真がSNSで話題となっています。女性の活躍する姿、ふるさとへの思いなど取材しました。

シャッターを切るのは、フォトグラファーの藤井音凛さん、23歳です。奄美大島の奄美市出身で現在、神奈川を拠点に活動しています。

この日訪れたのは、霧島市隼人町のガラス工房ART DESHIMARUです。職人がつくった鹿児島の伝統工芸品、薩摩切子をカメラに収めていきます。写真は、来年度から配布される県観光連盟の新しいパンフレットに掲載するものです。

薩摩切子本来の色味や輝きを生かすため、照明は使わずに自然の光だけで撮影していきます。

(藤井さん)「透かしたら、こんなにもきれいなんだよっていう素晴らしいガラスを見てもらいたいなって思って、自然の光で照らしている様子を撮った」

(ガラス工房弟子丸 下簗清美専務)「若いのにすごい。こういう伝統工芸に目を向けてもらったのがすごく嬉しい。行ってみたいと思ってくれるパンフレットになったらいい」

藤井さんがこれまでに発表した作品です。美しく、はかなさもある、まるで絵のような写真は、若い世代を中心にSNSで人気を集めていて、ツイッターのフォロワーは現在2万人以上。全国各地から撮影依頼を受け、年間10万枚もの写真を撮ります。

今回の県観光連盟のパンフレット製作では、県本土から離島までおよそ50か所の観光地を1か月かけて巡りました。

(藤井さん)「大好きな地元の人たちから撮影に呼んでもらえるのがうれしい。(パンフレットを見て)色んな方が見に来て、地元を盛り上げていけたらいいな」

今回の観光パンフレットのターゲットは20代から30代で、若い世代の感情に響く藤井さんの写真に県観光連盟は期待しています。

(県観光連盟 清水美千代さん)「自然豊かな奄美大島で育って、積極的にSNSなどで発信している藤井さんは今回の企画にぴったり。同じ世代の目線から鹿児島の魅力を表現していただきたい」

藤井さんが写真を撮り始めたのは、進学のため奄美大島を出て神奈川の専門学校へ行くと決めた、高校3年生のときでした。

(藤井さん)「(奄美を)出る前はずっと都会に憧れていたけど、奄美を出ることが少しずつさみしくなって、自分で頑張って貯めたお小遣いで初めてカメラを買って、向こうでは島シックにならないように写真を撮りためた」

ふるさとの様々な景色を撮影する日々。すると、今まで気付いていなかった島の魅力が見えてきました。

(藤井さん)「バスに乗っている途中から、もう海が見える。これがすごくきれいで、ぜいたくだなって」
「奄美は本当に星がきれいで、肉眼で天の川みたいな感じで見える。島でしかない魅力がいっぱいあるんだなっていうのにも気付くことができた」

島を出てからも帰省の度に写真を撮り続けた藤井さん。日記感覚でSNSに写真を投稿していたところ、次第にフォロワーが増え、多くの感想が寄せられるようになりました。

「絵に描いたような楽園」
「きれいで優しくて見入ってしまう。飛行機に乗って行きたくなりました」

(藤井さん)「奄美の写真を通して、『奄美に行きたいから、どこがいいですか』とか『奄美に行ってきました』と連絡も来る。少しでも奄美のことを知ってくれる人が増えて、たくさん発信してよかったなって」

先月23日は、地元・奄美大島での観光パンフレットの撮影。自然豊かな役勝川沿いの「役勝エコロード」を訪れました。

(藤井さん)「落ち着く。帰ってきたって感じ」

あいにくの雨でしたが、シャッターを切る藤井さんはうれしそうです。

(藤井さん)「奄美で生まれたおかげで奄美の景色と出会え、その景色を撮りたいっていう思いからカメラを買って、カメラを通していろんな人を幸せに、心に寄り添うことができたので、奄美がないと私はいなかったと思っている」

「いつかは奄美で撮った写真も含めて、写真集だとか何か形にして、それをまたみんなに届けたい」

フォトグラファーとしての自身の原点は、奄美にあると話す藤井さん。ふるさとへの思いを胸に、これからもカメラを構え続けます。

藤井さんが撮影を手がけた観光パンフレットは、来年4月以降、県内の観光案内所などに設置される予定です。