今月10日から行われている日米共同統合演習=キーン・ソード。鹿児島県内では奄美大島や徳之島で離島の防衛を想定した訓練が行われています。
あす19日までとなった訓練では何が行われているのか?そしてその狙いとは?取材しました。
18日午後、徳之島町の花徳海岸です。100人を超える住民らが見つめる先にあるのは、浜へと向かってくる陸上自衛隊の水陸両用車「AAV7」です。
日米共同統合演習=キーン・ソードは、日米あわせて3万6000人が参加する最大規模の演習です。今回は徳之島でも初めての訓練が、陸上自衛隊の水陸機動団とアメリカ軍の海兵隊が参加して行われています。その念頭にあるのが、中国の海洋進出と台湾有事への懸念です。
(記者)「徳之島町の海岸です。いつもは静かな砂浜に水陸両用車や警戒用のゴムボートがずらりと並び、ものものしい雰囲気となっています」
花徳海岸での訓練は17日も実施。敵役として上陸してくる水陸両用車を機動戦車で迎撃しようと構えるなど、訓練は攻守に分かれての「対抗形式」、より実戦を意識したものとなっています。
18日午前、伊仙町ではアメリカ軍のオスプレイが着陸。小銃を持った10人ほどの海兵隊が降りたち、周囲を警戒していました。16日は自衛隊のオスプレイも使われるなど、初めて日米のオスプレイを使った離島防衛や後方支援の連携訓練が行われました。
また18日、徳之島には、有事の際の連携強化をめざし、NATO=北大西洋条約機構や、韓国、フィリピン、オーストラリアなど7か国の隊員が視察に訪れました。
(NATO軍の隊員)「(Q.中国に近い南西諸島での訓練をどう思う?)それに関する知識がないので、答えられない」
鹿児島の離島ではアメリカ軍が参加した訓練が繰り返されていて、今回も含め、過去5年で奄美大島で4回、種子島で2回、十島村の臥蛇島と徳之島でそれぞれ1回となっています。
なぜ訓練が鹿児島の離島なのか?アメリカのシンクタンクの研究員に聞きました。
(米・戦略国際問題研究所 ニコラス・セーチェーニ上席研究員)「中国がこれ以上突き進まないようにするためには、南西諸島の防衛が非常に重要」
日米関係などを研究するニコラス・セーチェーニ上席研究員は、台湾有事の懸念が高まる中、台湾に近い鹿児島の離島で行う訓練は重要性が増していると話します。
(ニコラス・セーチェーニ上席研究員)「もし中国が台湾に侵攻したら、台湾に近い日本も危険にさらされると想定しないといけない。だからこそ、中国を抑止するために、鹿児島から沖縄に至るまで(日米の)存在感を示すことが重要」
一方、徳之島は2010年に沖縄県のアメリカ軍普天間基地の移設先に浮上したものの、住民が強く反対し、撤回された経緯もあります。あれから12年、徳之島で初めて行われた日米の共同演習に島民は…。
(60代)「(Q.12年前、米軍に来てほしかった?来てほしくなかった?)当時は来てほしくなかった」「(Q.今、こうした訓練の実施は?)世界でいろいろな事があるので、してもいいのかなと」
(30代)「さっき、訓練を見学してきた。現実を見せつけられた感じがあった。実際にこういう事が起こるんだろうなという」
(20代)「実際に訓練が生かされる場面が起きたら怖い。安心できる平和な未来がいいです」
安全保障のキーワードのひとつになっている南西諸島。住民の気持ちは複雑です。