今年、北海道内ではクマの目撃が相次いでいますが、合わせて問題になっているのが、クマの駆除にまつわる行政への行き過ぎた苦情です。過剰クレームは、なぜ、起きるのでしょうか?
中山峠のクマ(視聴者撮影)
「待って待って待って…やばい、危なすぎる」
落石防止の柵の上に登るクマ。今月15日、札幌市近郊の中山峠で撮影されました。
各地でクマの目撃が相次いでいる今年、道がX(旧ツイッター)に投稿したメッセージが反響を呼んでいます。
道公式X
「ヒグマ有害捕獲へのご理解のお願い」
「捕獲への非難は、その担い手確保の支障となりかねません。こうした社会的重要性について、どうかご理解をお願いします」
異例の投稿メッセージの閲覧回数は、すでに2100万回以上。
背景には、やむを得ない駆除に対する行政への過剰なクレームがあります。
「うそをついてただクマを殺しているだけだ」
「クマを殺したいんだろう」
北海道 ヒグマ対策室 武田忠義主幹
「多い日には日に10本ぐらいの電話があり、1本1本の電話が長いので仕事にも大きく差し障った」
きっかけのひとつになったのは、66頭の牛を死傷させたクマ=OSO18が8月に駆除されたことでした。
直後の9月から11月22日までに、北海道に寄せられた抗議の電話は111件にのぼります。
「クマを捕獲すること自体許せない」
「北海道には二度と行かない。北海道産の商品は買わない」
北海道 ヒグマ対策室 武田忠義主幹
「捕獲したハンター個人まで特定して、非難するような電話がたくさんあった。有害性のあるヒグマを捕獲している。どんなヒグマもすき好んで殺しているわけではない」
「やむを得ないクマの駆除」と「行政への過剰クレーム」
23日、札幌市で聞きました。
30代女性
「子どもが通学するところだと、クマ出られちゃうと怖いので、駆除どう、怖いよね」
20代男性
「専門家の人に任せて山に追い返してもらうのがベストだと思う。でもやむを得ないとは思います、最終的に」
70代男性
「駆除してほしくないね、クマも生き物だから」
60代女性
「やはり駆除してほしい、一度人間を襲ったクマは何回も襲うという話を聞いたことがある」
北翔大学心理カウンセリング学科 飯田昭人教授
「命を奪われているという意識で、強く要求というか意見を伝える人が多いのかなと、一歩間違えるとカスタマーハラスメント、通称カスハラと呼ばれるような」
道内のクマの数は、推計で1990年度の5200頭から、2020年度は1万1700頭と2.2倍に増え、あわせて、生息域も広がっている現実があります。
酪農学園大学環境共生学類 佐藤喜和教授
「人が多い以上、近くにクマが生活し定着している状況は、何かあったときに人身事故に至る可能性が高い。これからは積極的に駆除をやっていく必要がある」
北翔大学心理カウンセリング学科 飯田昭人教授
「市民であれば何を言っても許されるのかというと、そういうことはない。ひとりの人間として冷静に伝える。そういうことが大人には求められる」
道によりますと、寄せられる「過剰クレーム」の大半は名乗りません。
今年のクマの異常な出没は「攻撃的な物言い」や「筋違いの批判」など、不満を発散させる人間の影の部分もあぶり出したのかもしれません。