全国で大ヒット公開中の映画「ゴールデンカムイ」。北の大地を舞台に、莫大なアイヌの埋蔵金を巡る一攫千金ミステリーと、厳しい北海道の大自然の中で、一癖も二癖もある魅力的なキャラクターたちによって繰り広げられる、埋蔵金争奪の冒険サバイバル・バトルアクションです。
原作は、「マンガ大賞2016」や「第22回手塚治虫文化賞『マンガ大賞』」に選ばれた累計2700万部を突破した、北海道出身の漫画家、野田サトルさんの同名コミック。北海道の歴史、狩猟、グルメなど文化的要素も丁寧に織り込まれた比類ない作品として、高い評価を得ています。
山田杏奈さん 役作りへの意気込み
ゴールデンカムイの世界観において、重要な要素のひとつになるのが「アイヌ文化」です。

「実際にアイヌ工芸家の方達に作って頂いた衣装や小道具は身に着けるだけで心強かったです」と答えるのは、アイヌの少女・アシㇼパ役を演じた山田杏奈さん。
2018年公開の映画「ミスミソウ」で映画初主演を務め、2023年に公開された、柳田國男の「遠野物語」に着想した映画「山女」では、主人公・凛役を演じ、第15回TAMA映画賞で最優秀新進女優賞を受賞しました。
若手女優ながら様々な役柄に挑んできた彼女が、今回、取り組んだ役がアシㇼパでした。
撮影に際して、山田さんは「撮影中はアイヌ語・文化監修の中川裕先生や、大叔父役でも出演されている秋辺デボさんにアイヌ語のイントネーションや所作をご指導頂きました。事前には色々な文献を読んだり、二風谷アイヌ資料館やウポポイに行ったりしました」といいます。この作品に挑む山田さんの意気込みが伝わります。

山田さんが撮影前に訪れたウポポイ(民族共生象徴空間)とは、2020年7月に北海道白老郡白老町にオープンした、アイヌの歴史と文化を学び伝えるナショナルセンターです。
アイヌを主題とした日本初の国立博物館のある「博物館エリア」と、伝統的コタンや工芸などを体験できる「民族共生公園エリア」があります。

博物館エリアには、伝統的な衣服などが展示されているほか、アイヌの視点でことば、文化、歴史について紹介されています。
また、民族共生公園エリアでは、工房でアイヌ工芸の実演が行われています。制作風景を観覧することができ、実演者との会話が楽しめます。木彫りや刺繍などの作品作りを体験できるコーナーも充実しています。
「夢中になり、時間を忘れてしまう」

この映画の監督を務めた久保茂昭さんも、撮影前にウポポイを訪れました。監督として作品のクオリティを高めるため、ウポポイには二度三度と足を運んだそうです。
初めて訪れたときの印象を「その丁寧な作りと迎え入れてくれる空気感に圧倒されました。アイヌの歴史、生活、思想などは勉強していたつもりでしたが、それらを直に深くに感じることができる展示に夢中になってしまい、時間を忘れてしまいました」と振り返ります。
博物館エリアの展示場を視察した久保監督は「アイヌの言葉『イランカラㇷ゚テ』で迎え入れられたとき、なぜか癒されました。生活、思想など本物の展示や映像などが印象的で、そこにある著名なアイヌの方々の言葉は、心に刺さりました」といいます。

さらに、「工房では、アットゥシ(アイヌの伝統的な衣服)を手掛ける、工芸家さんの丁寧な作業が印象に残っています。質問や会話に、優しく接してくれて嬉しかったですね。一番感動したのは伝統芸能の上演を直に見られたことですね。アイヌ文化を歌や口承文芸で伝える、その想いを直に見られるライブ感は感動しました」と続けます。

映画の中では、アイヌの伝統的な料理のシーンも登場します。山﨑賢人さん演じる杉元佐一とアシㇼパが鍋を囲み、「オハウ」と呼ばれるアイヌ料理の汁物を食べます。山田さんは、撮影で使用したオハウを「とても美味しかったので、おかわりしてしまいました」というほど気に入ったようです。
ウポポイには、オハウをはじめ様々なアイヌの伝統料理や、その調理方法や食材を用いた創作料理を提供するレストランなどがあります。アイヌの歴史と文化を学んだ後に、これらの料理でお腹を満たすのも良いかも知れません。
アイヌ文化の魅力とは

撮影を終えて、山田さんはアシㇼパ役を演じた印象をこう答えます。
「原作にアシㇼパ自身が『私は新しい時代のアイヌの女なんだ』というセリフがありますが、そういう考え方がとても好きだし、演じる上でも大事にしていました。北海道で撮影ができたことで、アシㇼパが見てきたであろう風景の中で演じることができ、よりアシㇼパの想いを表現できたように思います」

最後に、久保監督にアイヌ文化の魅力を聞きました。
「この大地での暮らしに宿るもの、カムイが存在し、その大義も存在する。その考え方が、やはり感慨深いです。大地と共に生きる意味を永遠に伝承していく文化が本当に魅力です」。
山田杏奈さんや久保監督をはじめ、多くの出演者やスタッフの思いが詰まった映画「ゴールデンカムイ」。あなたも映画を鑑賞した後、ウポポイを訪れて、実際にアイヌ文化に触れてみてはいかがでしょうか?

映画「ゴールデンカムイ」は大ヒット公開中
「ウポポイ(民族共生象徴空間)」
北海道白老郡白老町若草町2丁目3
※車で札幌から約1時間、新千歳空港から約40分