男子決勝に進んだ二人は、互いに対戦相手を「少年時代からのライバル」だと言った。ともに、現在24歳。大学進学後にプロ転向という足跡にも重なるものがある。
菊地裕太は岩手県出身。名門・相生学院に進学し、高校のタイトルを総なめにした後、米国のカリフォルニア大学バークレー校に進んだ。

方や羽澤慎治は、高校生時代からジュニアの国際大会を転戦。グランドスラムジュニア等を主戦場としつつも、「もっと力をつけてからプロ転向」すべく慶応大学に進学した。そんな羽澤を、菊地は高校時代に「凄く良いお手本」として見ていた言う。

「羽澤君は、海外に行って返ってくるたびに、ボールが重くなっていたり強くなっていた。すごく良い刺激をもらっていたと思います」

肌身で感じる羽澤の成長は、もしかしたら菊地の海外志向を後押しした因子かもしれない。

大学進学を機に分かれた二人の足跡が、再び交錯したのが今回の『SBCドリームテニスツアー』。しかも舞台は、決勝戦。菊地にとって今大会が5年ぶりの日本での試合であり、両者の対戦も6年ぶりのことだった。その試合で菊地は、なつかしさと驚きの、両方を覚えていたという。

「やっぱり変わってない部分もたくさんあって。プレースタイル自体は、二人とも基本は同じで、ライバルとしてやっていたなっていうことを思い出していました。でも(羽澤の)サーブが良くなっていたり、ボレーの切れに加えて今日はドロップショットも打たれたので、そういうところは成長してるなっていうのもすごく同時に感じてました」

その中で菊地が最終的に上回れた要因は、勝負どころでの駆け引きや判断力だった。

「第1セットを取れたのが大きかった。大切なところで良いサーブが打てたり、相手に前に出られる前に逆に自分からネットを取れたのが良かったかなと思います」

優勝を決めたウィニングショットは、両者ネット際の攻防の中から菊地が放ったドライブボレー。二人の持ち味と成長を象徴するシーンだった。

女子の決勝もまた、趣深い顔合わせとなる。
清水綾乃は、2度の手術を経て昨年末に復帰した25歳。対する瀬間詠里花は、単最高位114位の34歳。瀬間は昨年末から、清水が小学生時代から拠点とする高崎テニスクラブで、かつて居た位置に戻るために自分を追い込んできた。

一次は目標を諦めかけた中で、高崎に拠点を移しコーチ陣の指導を受けるなかで、「今は毎日コートに行くのが楽しみ」と瀬間は言う。「私のことを信じてくれるので、すごく心強い。本当に感謝している」と言い浮かべる涙には、夢にかける覚悟が滲んだ。今大会への参戦意義も、「賞金を手にし、コーチをつけて遠征を周りグランドスラムにつなげたい」と明確だ。

課題としてきたフォアハンドの向上も実感しながら、勝ち上がった今回の決勝の舞台。ただそこで待つ清水もまた、この半年ほどで大きく成長した選手である。特に決勝戦で目立ったのは、角度をつけたフォアのショット。そしてそこからつなげるネットプレー。清水本人も「アングルは試合の中で有効だと気が付けた。ボレーはここ最近練習し、自信がついてきた」と控えめな笑みを広げた。

現在取り組んでいるスライスも含め、今の清水はランキング最高位を記録した4年前よりも多彩で幅の広い選手になっている。

「グランドスラムの予選に早く戻るのが近い目標。いずれは本戦から出場できる選手になりたいし、本戦で勝っていける選手になりたい」

そう清水は明言した。

男女ともに決勝に進んだ4人の選手たちは、歩んだ道はそれぞれながら、同じ地点を目指し頂上決戦の舞台へと至った。
それは、この大会のさらに先に広がる世界、そしてテニス界の最高峰であるグランドスラムだ。

文/内田暁