お菓子や土産品などを入れるパッケージ箱を作る会社が、製造工程で出てくる紙の廃材を集めて販売しています。国連が掲げる持続可能な17の開発目標のうち、12番目の「つくる責任 つかう責任」にも繋がる取り組みです。使う人の自由な発想を一番に考えた、シンプル・イズ・ベストな商品とは?

従業員は16人で、1日におよそ3,000個もの紙箱を製造するのは、石川県七尾市古府町に工場を構えるアスカ商事です。

主に贈答用のお菓子や土産品の入れ物に使われる「貼箱」。一見シンプルなつくりに見えますが、製造工場のスタッフたちは大忙しの様子です。ここで毎日作られる貼箱は、土台部分となる厚紙に加え、その外側を包む貼り紙、これら2つを機械と手作業を組み合わせて作る必要があり、複雑な工程を経ています。

貼り箱の検品作業を行う工場スタッフたち


この工場で働く河野嘉奈さんは、アスカ商事に入社して14年、日々製造作業に励む中で長年感じていたことがありました。

「裁断機といって作りたい箱の寸法に合わせ紙を切る機械がある。箱の寸法が足りないと、紙の切れ端が生まれる」(アスカ商事・河野嘉奈さん)

毎日必ず出る紙の切れ端のゴミ。取引先の業者が年々増加するにつれ、その量も年々増えている


箱を作る際に一番はじめの工程で出る、「切れ端」のゴミ。その量は、なんと月に3トンから最大5トンに及ぶといいます。

「一応古紙回収業者に買い取ってもらう形はとっていたが、せっかく綺麗な紙なのにゴミとして廃棄されるのはとても勿体ないとずっと思っていた」(河野さん)

緑やゴールドなどの単色のほかにも、華やかで美しい柄が印刷された色紙の数々。
河野さんは同僚2人とともに今年2月、これまで使い道がなく捨てざるを得なかったこうした紙の切れ端を集めて短冊状や正方形に切り、販売を始めました。その名も、「箱になれなかった紙たち」です。名前に込められた思いは…。

「箱になれなかった紙たち」一袋440グラムで300円~販売

「本当は箱になれたら客の元へ行くっていうものだが、それに外れたというか。多分この紙たちが、意志があって人間のように考えが持てるようならこういうことを思うんじゃないかなという気持ちで(名前を)付けた」(河野さん)

ハサミで切ったり型でくり抜いたりと、使い方は無限大。購入した人に自由な発想で活用してもらおうと、切れ端はあえて加工せず、そのままの状態で販売します。

「おうち時間が増える中で、親子のコミュニケーションを取るツールとしての工作だったり、そういう趣味を持たれている人に使ってもらうには、そのままの紙で皆さんの手元に届くほうがいいんじゃないかという考えにシフトした」(河野さん)

「箱になれなかった紙たち」を購入した人が、金沢市にいます。SHABO金澤の、小川幹杏永さん。普段は三味線の指導を行う傍ら、和楽器に気軽に触れて貰おうと今年3月、金沢市内でダンボールで作る三味線のワークショップを開催しました。

「これまで消しゴムはんこを使ってやっていたが、今コロナの観点ではんこを使い回すというのが大変。そんな時に何か紙を貼ってやったりシール貼ってやったら?という意見が出てきて。何と言っても『箱になれなかった紙達』っていうネーミング。寂しげな感じだが、これをワークショップの参加者でしゃみせんBOXという『箱』に戻してあげようと考えた」(小川幹杏永さん)

大きな画用紙を切る必要がなく、切れ端をそのまま箱に貼り付けることもできる。そんな手軽さが、子ども連れの参加者にも好評だったといいます。

「箱になれなかった紙たち」は、インターネットでは「メルカリショップ」のほか、店頭では七尾市のあおカフェショップをはじめ、県内3か所で購入することができます。

「本当にもったいないという気持ちが強いので、手に取られた方にそういった『資源を大切にしたい』という気持ちに一緒になってもらえたらと思う」(河野さん)

「まだまだ使える紙達を、何か素敵なものに変身させてほしい」使う側の想像力をかき立て、新たな命を吹き込んでもらおうと願う、アスカ商事の思いです。