文科省は去年、公立小中学校の通常学級で発達障害の可能性があり、「学習面、又は行動面で著しい困難を示す児童生徒」の割合は8.8%に上ると発表した。35人学級だと1クラスに3人が特別な教育支援を必要としていることになる。
そんなに?と驚いた方もいるのではないだろうか。筆者もこれまで発達障害がある人と接した経験はなかったように感じた。しかし、取材をしてみると、発達障害は見た目ではわからないからこそ、気付きづらいという現状が見えてきた。
お母さんもわからない発達障害 見えないからこそ気になる周囲の無理解
このところ、SNSでは発達障害について発信する方が増えてきている。「もっくん&かりんとう」もそのうちの一つで、軽度の知的障害と軽度〜中度の自閉症スペクトラムだと診断されたもっくんと、妹のかりんちゃんの日常生活を発信している。中には100万回再生を超える動画もあり、「勉強になります」「この動画で自閉症がもっと伝わればいいのに」などのコメントがついている。
発達障害というが、どんな“障害”なのか知りたい。私は「もっくん&かりんとう」を発信しているお母さんに連絡をし、「普段の様子を見せてほしい」とお願いした。もっくんとどのように接していいのだろうかと少し緊張しながらお宅にお邪魔すると、挨拶もままならないうちに、もっくんが私に迫ってきた。おもちゃやゲームを見せながら「これはね!こっちはね!」と猛アピール。
「なんて元気な男なんだ」と初めはほほえましく思った。
しかし、私の笑顔は徐々に戸惑いに変化した。お母さんに発達障害について伺っている最中、私の隣でゲームをしつつ、急に割り込んできて「おねえさん、これ、押して!」とアピール。なかなかお母さんとの会話も進まない…。

最初の「元気な男の子」という印象は、時間をともにすればするほど、「元気な男の子」にとどまらないことがわかってきた。
もっくんと接してみて、初めの印象と、時間を過ごしてからの印象では違いがあることをお母さんに伝えると、発達障害は目に見えないからこそ、その子が本当に抱えている課題が周囲に伝わらないのだと話してくれた。
お母さん
「もっくんの特性の1つに、目に入ってきたものに対し、周りを確認せず行動してしまう“衝動性が強い”というところがあります。ただ、そういった行動は何も知らない人にとっては、『元気な男の子』といった印象を持たれるだけなんです。
先日、もっくんの衝動性の強さが落ち着くまで他の車に迷惑がかからないように、障害者用の駐車場に停めて降りたんです。すると『なんでそこ、止めるんや!』っておじさんに怒られて。『この子は発達障害で、少しお借りしています』って言っても、『一応自閉症でも歩けるやろ』って感じで。元気な男の子にしか見えないからって」
“発達障害”は目で見るだけでは判断しづらい。私も発達障害を知らないがために、これまで課題を抱える人たちのことを見過ごしてきてしまったのかもしれない。そんな反省をお母さんに伝えると、「難しいですよね…一緒にいないと伝わらないですから、本当はどこか一緒に出かけてほしい」と笑った。
実は、お母さん自身も、もっくんに障害があることになかなか気づくことができなかったのだという。