熊本県は全国有数の農業県だとご存じだろうか?熊本と聞いて、多くの人は阿蘇の大自然や名湯、高くそびえる熊本城、そして全国で愛される「くまモン」を思い浮かべるだろう。

実は、全国トップクラスの農業県で、農業産出額は全国6位、生産農業所得は3位を誇る(2025農林水産省調べ)。全国1位の生産量であるトマトやスイカ、不知火類(デコポン®)をはじめ、畜産物や水産物に至るまで、様々な品目が全国で高いシェアを誇っている。また、からし蓮根や馬刺しなどの郷土料理や伝統食に加え、球磨焼酎などの県産酒もあり、食文化も多彩。一方で、「食のイメージがある都道府県ランキング」では全国24位(2025年:有限会社永瀬事務所 バイヤーズ・ガイド事業部調べ)にとどまり、豊かな食の実態に反してイメージが低い現状がある。

多様な農林畜水産物と豊かな食文化を誇る熊本


そこで熊本県は、この「実力」と「イメージ」の大きなギャップを埋めるために、「食のみやこ熊本県」を創造するためのビジョンを掲げた。スピード感をもって、構想を推進するため、県として初めてとなる部局横断型の新組織、「食のみやこ推進局」を設置。「食」を地域活性化の柱と位置づけ、熊本の豊かな農業資源と食文化を活かし、高付加価値化を進めることで、稼げる農林畜水産業の実現を目指している。

こんなにたくさん!熊本県の豊かな食

縦割りを排し、全方位で挑む新戦略

「生産から消費までを一気通貫で結び、県名自体を食ブランドに育てる挑戦です」と、食のみやこ推進局 局長・間宮将大さんは力強く語る。その戦略の核となるのは、縦割りを越える「つなぐ役割」だ。具体的には、食のPRイベントの開催や、EC販売強化に新たな輸出市場開拓、情報発信力のある料理人の育成、ガストロノミーなど7つの重点プロジェクトの連動を強調する。

食の分野の有識者との議論を経て策定されたビジョン。その象徴であるロゴ「うまさ三ツ星」には、深い意味が込められている。それは単なる生産者支援に留まらず、生産・加工・流通・販売・消費というフードバリューチェーン全体を強化する点にある。生産者、流通業者、料理人など、これまで個別に活動してきた関係者が連携し、「オール熊本」で取り組むという狙いが表れている。

「食のみやこ熊本県」のロゴマーク


様々な取り組みによるロケットスタートを

ビジョンの一つである、「情報発信力のある料理人の育成」を目的として立ち上がった「食のみやこ熊本シェフズアカデミー」では、シェフが自ら生産現場に足を運び、生産者と深く交流。「食」と「産地」をダイレクトに結ぶことで、県産食材の真価を語れる語り部を育てていく計画だ。

シェフズアカデミーによる現地見学の様子


その情熱は、次世代を担う子どもたちへも注がれる。学校教育の場では、郷土の伝統料理についての出前講座や、県産食材を使った学校給食を通じ、「地域の食文化を誇りに思う食育」を進めている。

熊本の食の魅力の再認識、県内の食の関係団体間の情報共有などを目的とした「チーム食のみやこ熊本県ネットワーク交流会」には、生産、加工、流通、販売、観光など、食の関係機関から総勢100人以上が参加。組織の垣根を越え「共に何ができるか」を語り合うフィールドができた。

熊本の食を盛り上げる結束が強まった「チーム食のみやこ熊本県ネットワーク交流会」

都市圏では、熊本物産フェア「くまもとモン×〇〇ジャック」を戦略的に展開。熊本の食の魅力を全国へ発信している。

東京・松屋銀座での「くまもとモン×東京銀座」グルメフェアの様子。小山薫堂さんも駆けつけた


食のみやこ推進局・間宮将大 局長
「2026年度は『食のみやこ熊本県』の創造に向けた重要な一年と位置づけています。商品開発支援や料理人育成など、『食コンテンツ』の更なる磨上げを重点的に行うとともに、県内での機運醸成と消費拡大だけでなく、大都市圏での通年プロモーション等の取組みも徹底的に進めます。さらには、国内外での「食」の認知度向上及び販路拡大も加速させていきたいと考えています」

食を体現する「三ツ星グルメフェス」

こうした取り組みの成果を示す場となったのが、今年2月に熊本市中心部で開かれた「食のみやこ熊本 三ツ星グルメフェス」だ。

熊本市の花畑広場をメイン会場に、近くの新市街アーケードでも「ファーマーズマーケット」が開かれ、2日間で5万人以上が来場。会場では県産食材を使った料理や特産品が並び、多くの人で賑わった。

開会での挨拶をする熊本県・木村敬知事


メイン会場には、阿蘇、天草、県北、県南など県内各地の名店がずらりと並び、グルメイベントにほとんど出店をしない人気店も多く集まり、開場直後から長い行列ができた。あか牛やりんどうポーク、海鮮料理など、人気の料理に舌鼓を打ち、笑顔を見せる来場者の姿も見られた。食べるだけでなく、お店の方と直接会話を楽しみながら「食」を知ることができる場にもなったようだ。

美味しい香りに包まれた「食のみやこ熊本 三ツ星グルメフェス」の会場
出展者との話も楽しみの一つ


県産酒ブースでは、県内各地の酒蔵から選りすぐった新酒や名酒が並び、美味しい飲み方のレクチャーも行われた。酒造元からは酒屋や飲食店にあまり出回らないお酒の提供もあり、希少な味を楽しめた来場者も。

様々な酒蔵の球磨焼酎もずらり


「高校生地産スイーツ創造プロジェクト」のブースでは、県内高校生と人気パティシエによる共同開発のスイーツもお披露目された。スイーツ誕生までのプロセスでは、「高校生からのアイデアや質問の熱量が素晴らしかった」とプロのパティシエも絶賛。

各高校が地元の名産品を選びスイーツを開発した
みやび鮪の解体ショーでは歓声が大きく上がった


新市街の「ファーマーズマーケット」会場は、県産の新鮮な農林畜水産物が並び、野菜の直売には長い列ができたほか、農業体験ゾーンでは、親子連れなどが土に触れながら香りも楽しめる喜びを味わった。

単に買い物を楽しむ場所というだけでなく、生産者から「美味しい食べ方」を教わり、消費者が「ごちそうさま」を直接届ける。そんな「食と農の幸福な循環」が会場のあちこちで見られた。

希少種のあか牛も人気
ラジオの生放送も行われ、会場から熊本産品の美味しさを伝えた
農業体験ゾーン。街中で農業体験ができるとあって、こどもたちも大喜び


2026年、「食のみやこ」として飛躍の年へ

「食のみやこは一日にしてならず」と、間宮局長は力強く語る──熊本県はこの息の長い取り組みを一過性で終わらせないため、年度の切れ目なく事業を推進していく方針だ。2026年は県内外への強力な情報発信の年と位置づけ、熊本空港でのプロモーション強化、リアルとオンラインを連動させた販路拡大など、計画は目白押しだ。

生産者、事業者、そして消費者一人ひとりを巻き込んだ、熊本の食をめぐる大きな「うねり」を創り出せるか。誰もが認める「食のみやこ熊本県」へ、熊本県の挑戦は続く。

「食のみやこは一日にしてならず。根気よくつづけます」と間宮局長は力強く語った

「食のみやこ熊本県」公式Instagramはこちら

「食のみやこ熊本県」公式Tiktokはこちら