2020年に兵庫県宝塚市で、家族4人をクロスボウで殺傷したな男(28)に、神戸地裁は「無期懲役」を言い渡しました。“死刑を望んでいた男”に、無期懲役が言い渡された理由とは。

 「主文、被告人を無期懲役に処する」

 裁判長が判決を言い渡す間、被告はじっとうつむいたまま座っていました。

▽「3人以上殺さないといけないということを学校で習っていた」

 判決によりますと、野津英滉被告(28)は2020年6月、宝塚市の自宅でクロスボウを使って矢を発射し、同居していた祖母・母・弟の3人を殺害。さらに伯母も殺害しようとしました。

 これまでの裁判で野津被告は、起訴内容を認めたうえで動機について…

 検察官「家族のうち、誰か1人を殺すのではだめだった?」
 野津被告「自分が死ぬために死刑になるには、3人以上殺さないといけないということを学校で習っていたので、わざわざ3人殺しました」

 検察側は「症状の程度は重篤なく、完全責任能力が認められることは明らか」として、死刑を求刑。

 一方、弁護側は「自閉スペクトラム症が動機形成に強い影響を与えた。当時、被告は心神耗弱の状態にあった」として、懲役25年が相当と主張していました。

▽「被告の反社会性が発露した事件とも言えない」「生涯をかけて償いをさせるのが相当」

 10月31日の判決で、神戸地裁(松田道別裁判長)は、事件当時の被告に完全責任能力があったと認定。「近隣住民に不安や恐怖を与えたばかりか、事件後にクロスボウが法規制されるなど、社会的影響も軽視できない」と指摘しました。

 一方で「死刑になることにより間接的に自殺を果たすことが目的となっていて、本件犯行に無理心中の要素があること自体は否定できない。極めて自己中心的な犯行とまではいえず、被告の反社会性が発露した事件とも言えない」として、「死刑を選択することが真にやむを得ないとまでは言えない」と判断。

 「生涯をかけて自らの罪の重さと向き合わせることにより、償いをさせるのが相当」として、野津被告に対し無期懲役を言い渡しました。