5年前、兵庫県宝塚市で家族ら4人がクロスボウで殺傷された事件。殺人罪などに問われた男の裁判員裁判。神戸地裁で午後2時から判決言い渡しの公判が始まり、、神戸地裁は野津英滉被告に無期懲役を言い渡しました。

主文を言い渡されている間、野津被告はじっとうつむいたまま座っていました。

起訴状によりますと、兵庫県宝塚市の無職・野津英滉被告(28)は2020年6月、自宅でクロスボウから矢を発射し、同居していた祖母(当時75)と弟(当時22)、母(当時47)の3人を殺害し、伯母(56)を殺害しようとした罪に問われています。

■「わざわざ3人殺しました」

裁判で野津被告は起訴内容を認め、動機について「死刑になるため」などと述べていました。

検察官:「家族のうち誰か1人を殺すのではだめだった?」
野津被告:「自分が死ぬために死刑になるには、3人以上殺さないといけないということを学校で習っていたのでわざわざ3人殺しました」

裁判官:「3人の殺害に後悔がないと言っていたが、殺害したことに対する罪の意識はありますか?」
野津被告:「全くないですね」

■裁判の争点は、犯行当時の被告の「完全責任能力の有無」

裁判の争点は、犯行当時の野津被告の完全責任能力の有無です。証人尋問では、精神鑑定を行った医師ら3人が出廷しました。

証言をした医師は、野津被告は自閉スペクトラム症と強迫性障害に罹患しているものの、精神病と診断されるほど重症ではないと証言しました。

別の医師は自閉スペクトラム症には極端な思考を持つ人が多い点で、この特性が犯行の”動機の形成”に影響を与えたとする見解を述べました。ただ犯行の実行にも影響しているかを問われると「あまり関係ないと思う」と述べました。

■重傷を負った被告の伯母「死ぬ瞬間まで三人に懺悔し続けてほしい」

裁判にはクロスボウに撃たれて重傷を負った伯母も出廷、事件発生から5年経った今も苦しみが続いていると話しました。

「あなたは家族三人を奪った。そして私の人生も大きく無理矢理変えられた。被害者として、遺族としての私を押し付けられ、そして加害者家族にもなった。事件のあと私はずっと自分を責めた。毎日毎日ずっと寝られなかった。自分も殺されればよかった、とどれだけ思ったか。」

「死刑になるための生贄のように殺されかけた私は、いくつもの後遺症を抱え、リハビリをしている。PTSDのフラッシュバックは事件の怖さで再現され、私はずっと苦しみ続けている」

そして最後に、こう話しました。

「あなたの行動は絶対に許されることはない。あなたはあまりに大きな取り返しのつかないことをした。あなたが、あとどれくらい生きるかわからないが、死ぬ瞬間まで後悔して、苦しんで、三人に懺悔し続けてほしい」

■検察側は死刑を求刑

求刑で検察側は「完全責任能力が認められることは明らかで、3人の命を奪った重大性は到底言葉では言い表し難いほど重い」などとして野津被告に死刑を求刑しました。

一方、弁護側は「被告の自閉スペクトラム症と強迫性障害が動機の形成と実行に強い影響を与えた」などとして「懲役25年にすべき」と主張しました。

10月31日午後、神戸地裁は野津被告に無期懲役の判決を言い渡しました。