音楽も服も「サブスク」の時代。モノは“所有する”のではなく、“必要なときに使う”という考え方が当たり前になった。そんなサブスクの発想を25年以上も前にすでに形にしていたサービスがある。それは、東京でも大阪でもなく、沖縄の一自動車整備工場から生まれた。その名も「スーパー乗るだけセット」。車の購入費から維持費、メンテナンスまですべて込み。利用者は“乗るだけでいい”という新しいカーライフの形だ。
危機から生まれた「新しい常識」
略して「乗るだけセット」の産みの親は、沖縄県沖縄市で創業50年を迎える西自動車商会。もともと外国人向けのレンタカー事業から始まった企業で、その後、中古車販売や整備へと事業を拡大してきた。だが1990年代後半、車業界は大きな転換期を迎える。中古車販売が過当競争となり、整備の仕事も減少。津嘉山修社長は、苦境の中で一つの問いに向き合っていた。
「車を売って終わりじゃなく、その後もずっと面倒を見られる形にできないか」
当時、車を「リースする(借りる)」という発想はほとんど浸透していなかった。借りるより買うほうがいいという価値観が根強く、同業者からも「そんな売り方は無理だ」と笑われたという。
それでも津嘉山社長は、あえてその逆を選んだ。車を「所有」ではなく「利用」するものとして提供する。しかも、車検・税金・メンテナンスをすべて込みの月額制にした。この挑戦こそが、後に全国に広がる「乗るだけセット」の原点になった。
アイデアのヒントは某ハンバーガーチェーン、名前は利用者の言葉から
スタート時のサービス名は「バリューセット」。世界的ハンバーガーチェーンのセット販売からヒントを得て、「車両+税金+整備=お得なセット」という意味を込めていた。しかし、ある日、津嘉山社長が女性客に説明していたときのこと。「整備も税金も全部こちらで対応します」と伝えると、その女性は笑って言った。
「じゃあ、私は乗るだけでいいんですね」
その一言が、「乗るだけセット」というネーミングの誕生につながった。言葉の響きはやさしく、意味も直感的でわかりやすい。難しいことは抜きにして、ただ車に乗るだけでいい──それがサービスの本質を見事に表していた。
「わかりやすさ」というサブスク的価値
津嘉山社長がリース販売を始めた当時、「月々の支払いを均等に」という考え方すら珍しかった。だが、その「わかりやすさ」は、働く女性や子育て世代に強く響いた。「車は欲しいけど、急な出費が怖い」「税金や車検のタイミングが来るたびにヒヤヒヤする」。そんな悩みを、月々一定の支払いで解決したのだ。
「車のローン」と聞くと、どうしても「負担」のイメージがある。しかし「乗るだけセット」では、車検・オイル交換・税金などの維持費がすべて込み。利用者は、月々の定額を支払うだけで、車に関する面倒ごとを気にせずに済む。特に共働き世帯や子育て世代の女性からの支持が高く、紹介による契約が全体の半数近くを占める月もあったという。
西自動車商会 津嘉山修社長
「説明しても伝わりづらい『便利さ』を、お客様同士が『体験で伝えてくれる』ようになった」
整備工場ならではの発想だった。
地方の小さな整備工場から、全国227店舗へ
「乗るだけセット」の加盟店は、いまや全国227店舗にまで拡大している。他のフランチャイズと決定的に違うのは、「ボランタリーチェーン」方式を採用している点だ。
津嘉山修社長
「一般的なフランチャイズは本部が指示を出す仕組みだが、雪国と沖縄では整備のノウハウも車の使い方も違うため、全国一律にはできない。だからこそ、地域ごとに自由に形を変えられるようにしたかった」
この考え方が、多様な地域に適応しながら広がる鍵になった。単なるシステム提供ではなく、「地域とともに成長する仕組み」として根づいたのだ。
津嘉山修社長
「都会の大手企業が始めたわけではない。潰れそうだった地方の整備工場が作った仕組みを、全国の仲間たちが学びに来てくれる。それが何よりうれしかった。加盟者が力を合わせて共にサービスを広げてくれた」
「スーパー乗るだけセット」は、いまや沖縄県内(取り扱い店舗情報はこちら)だけでなく、全国で取り扱い店舗が広がっている(取り扱い情報はこちら)。
“乗るだけ”で叶う安心と自由
「乗るだけセット」の最大の魅力は、「とにかくシンプルで、安心できること」。主力は7年契約だが、3年・5年プランも用意されている。車両代はもちろん、税金・自賠責保険・車検・法定点検・オイル交換などの維持費もすべて含まれる。さらに、走行距離制限なしを採用し、24時間レッカー対応プランなどもオプションで選択可能。軽自動車なら月々8,800円台〜利用でき、家計管理がしやすいと評判だ(*1)。
つまり利用者は、どこに相談すればいいのかを悩む必要がない。例えば、急な故障やトラブルが起きた時も、購入した店舗に連絡をすれば、24時間体制のサポートが対応する。契約期間中は、通勤や買い物、子どもの送り迎え、週末ドライブまでもちろん自由に利用可能。満了時には「返却」「再リース」「買い取り」「新しい車に乗り換え」から選べる。「ライフステージの変化に合わせて車を選び直せるのがうれしい」という声も多い。点検・整備の際は代車が無料で用意され、車が使えない不便も最小限に。“乗るだけでいい”というコンセプトを、細部まで徹底。その安心感が、リピーターや紹介者の多さにつながっている(*1)。
「車のことなら、全部ここに任せておけばいい」――そんな信頼関係が、利用者の心を掴んで離さない。
(*1)サービス内容は各取り扱い店舗によって異なる場合があります
支払いも、家計も、気持ちも軽くなる
「毎月の支払いが決まっているから、家計の見通しが立てやすい」
「車検や税金のタイミングを気にしなくていいのが本当に助かる」
利用者からはこんな声も多いという。この“心理的な軽さ”が、乗るだけセットの隠れた価値だ。買った後に費用が発生する従来の車購入とは違い、支払いも手間もすべて可視化されている。車が「不安の種」ではなく「生活の味方」になる。それが、このサービスが長年支持され続ける理由だ。
若者だけじゃない!高齢者のためのサブスク
近年は「かえせ~る」(*2)という新サービスも展開している。いくつかの条件があるが、65歳以上の利用者が、いつでも車を返却出来る仕組みだ。車を手放す時期までを安心して選べるようにするこの取り組みは、高齢化社会を見据えた次世代型カーリースの一歩でもある。
(*2)かえせ〜るは、株式会社オリコオートリースの商品
沖縄から全国へ。「車を持つ」を、もっと自由に
津嘉山修社長
「現金かローンか、あるいは『乗るだけセット』か。そんな第3の選択肢が当たり前になる社会をつくりたい」
「所有」から「利用」へ。車を持つという行為が、これまでよりも自由で柔軟なものに変わろうとしている。
25年前、沖縄の小さな整備工場が始めた挑戦は、いまや全国のカーライフを変えつつある。“乗るだけでいい”という言葉の裏には、乗るだけセット加盟店の努力と、「お客様に安心して走ってほしい」というまっすぐな想いがある。サブスクが当たり前になるはるか前、その原点のような仕組みが、沖縄からすでに走り出していた。
石垣島
陸運総合 株式会社
宮古島
合同会社 大進自動車
合同会社 NK自動車
沖縄本島
株式会社 西自動車商会(本店)
株式会社 次郎工業
長浜モーター 有限会社
株式会社 グローバルオート
人情くるまや三和自動車 株式会社
豊橋自動車 株式会社
株式会社 ヨザ自動車
株式会社 西自動車商会(とよみ店)
株式会社 松川オート
豊橋自動車 株式会社(南風原北インター店)
株式会社 北部自動車工業(車のガレリア名護店)
株式会社 西自動車商会(南山店)
