KOKO HOTELSが進化している。

KOKO HOTELSは、ポラリス・ホールディングス株式会社が運営するホテルブランドで、2020年に第一号店舗(銀座一丁目)を開業して以来、北海道から九州にかけて25店舗で展開してきた。24年12月には、ホテルウィングインターナショナルとテンザホテルを運営する株式会社ミナシアと経営統合を行い、25年9月から順次、ミナシアのホテル38店舗をKOKO HOTELSブランドへと統合し始めている。それらを合わせると26年4月(予定)までにKOKO HOTELSは計63店舗となり、次なる目標である「国内100店舗の実現」のロードマップを大きく前進する。

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親しみやすいブランド名に統合して認知度を高める

経営統合からブランド統合へと展開した背景には、統合後に行ったリサーチがある。大手ホテルチェーンの認知度が軒並み90%ほどあったのに対し、KOKO HOTELSとホテルウィングはともに20%台だったという。

そこで議論を重ね、KOKO HOTELSの店舗数を増やし、多くの利用者の目に触れてもらうブランド統合戦略が取られた。「KOKO HOTELS」「ホテルウィング」「テンザホテル」3ブランドの中でKOKO HOTELSを選んだのは、国内外の利用者にとっての親しみやすさと名前のもつポテンシャルを重視したからだ。

ポラリス・ホールディングス株式会社 代表取締役社長 田口洋平さん
「ウィングインターナショナルやテンザホテルと比べると、KOKOは短く、覚えやすく、予約時の検索がしやすいのが特徴です。また、当ホテルの宿泊者は過半数がインバウンドで、中長期のロードマップとして世界で認知されるインターナショナルブランドを目指す上でも、外国人にも発音しやすいKOKOが最適だと考えました」

ポラリス・ホールディングス株式会社 代表取締役社長 田口洋平さん


地域の魅力と出会い、新しい発見ができる拠点になる

ブランドの認知を高めるためには、利用者の目に触れるだけではなく、利用者の印象に残る店舗にすることも重要だ。だが、これが実に難しい。日本のホテルチェーンは世界的に見ても施設やオペレーションのレベルが高く、どこもきれいで便利。快適さだけでは利用者の記憶に残りにくい。

また、大手ホテルチェーンは、ハードの機能や雰囲気を統一することによってブランドの一体感を醸成し、利用者に安心感を与えている。一方、KOKO HOTELSはハードが異なる複数のブランドを統合するため、ハードの仕様を揃えるのが難しく、そのために資金を投じるのも投資戦略として合理的ではない。

そこでKOKO HOTELSが選んだのは、地域に根ざした各店舗の特徴を打ち出す戦略だった。同一ブランドでありながらハードの差があるのを逆にポジティブに捉え、店舗ごとの違いをそれぞれの個性として活かしていく。異なる店舗に宿泊することで、利用者はその都度、新しい体験ができる。そこに地方の魅力を加えることで体験価値はさらに高まると考えた。

こうした発想から生まれたのが、新たなコンセプト「Here Discovery Begins ──ここから見つける旅を」だ。「ここから」は、場所を表す「ここ」とブランド名の「KOKO」の両方の言葉を掛けていて、利用者がKOKO HOTELSの各店舗で常に新しい発見ができる場所にしていくのだというビジョンが込められている。

株式会社ミナシア 代表取締役 兼 ポラリス・ホールディングス COO 下嶋一義さん
「これまでミナシアが展開していたホテルとKOKO HOTELSとでは、店舗のつくりや雰囲気の違いはありますが、いずれも地域との連携が強く、これまでも地域の魅力を発信してきた経緯があります。そこで、宿泊を機にヒト、モノ、コトとの出会いを広げ、ひとつでも多く新しい発見をしてほしいという願いを込めてコンセプトをつくりました」

株式会社ミナシア 代表取締役 兼 ポラリス・ホールディングス COO下嶋一義さん

新生KOKO HOTELSは、お客様にもっと寄り添う場所へ

人だからこそ提供できる価値がある

近年のインバウンドの傾向として、有名な観光地から少し先のエリアへと足を伸ばす人が増えている。日本の文化、自然、歴史を探究する外国人観光客に、日本人でさえも深く知らない街や地域が人気を集めてもいる。そのようなニーズに応えるためには、ホテルが旅行者と地域をつなぐ役割を果たし、店舗の周辺地域の魅力を伝えることも重要だ。その役割をKOKO HOTELSでは各店舗に常駐するフロントスタッフが担う。地元の人しか知らない飲食店や店舗、季節ごとに行われるイベントの情報などを集め、利用者に提供していく。

田口洋平さん
「昨今は自動チェックインのホテルや、民泊のように完全セルフで利用できる施設も増えました。しかし、機械の使い方に迷ったり、質問や相談ができなかったりすることがストレスになることもあります。そのため、私たちは人がいる安心感を重視し、コミュニケーションを通じて地域に関する情報も伝えています」

下嶋一義さん
「フロントスタッフがいると、利用者の潜在的なニーズに気づき、新たなサービスへとつなげることもできます。たとえば、KOKO HOTELSでは近隣のコンビニエンスストアなどへ買い物に出かける利用者にエコバッグを貸し出しているのですが、これは購入した商品を手で持って帰ってくる利用者を見たスタッフの発案がきっかけでした。エコバッグの発案はおそらくAIにはできなかったでしょう。自動化やデジタル化は便利でオペレーション面でもコスト削減になりますが、人にしかできないこともあります。おもてなしや気づきは人が得意とすることです」

五感を通じて、KOKOを体験してもらう

利用者の印象に残る接点づくりといえば、もうひとつユニークな取り組みがある。それは、五感を通じてKOKO HOTELSを覚えてもらうことだ。

視覚の面では、都市部を中心に展開するスタンダードな「KOKO HOTEL」、ワンランク上のサービスを提供する「KOKO HOTEL Premier」、ファミリーなどが長期滞在できる「KOKO HOTEL Residence」、カジュアルに泊まれる「KOKO STAY」の4つのブランドそれぞれを色分けしてロゴを刷新。ロゴの色に合わせて4ブランドのキービジュアルも制作。建物、窓、標識などを抽象化したデザインで幾何学的にそれぞれのブランドの違いを印象的にアピールしている。

下嶋一義さん
「幾何学の中に何を見つけ出すかは人それぞれです。旅行を通じて自分の新たな一面を発見するように、ビジュアルも自分なりの見方で読み解いてほしいと思っています」


味覚にアピールするものとして、全国のホテルを5つのエリアに分け、北海道と東北のホテルは昆布、九州はあご(飛魚)といった具合に、各地域の特産品を生かした出汁を楽しんでもらうアイデアも考案。部屋にティーバッグ型の出汁を置いて、味覚で地域の良さを味わいながらリラックスしてもらうという、日本ならではのおもてなしだ。

田口洋平さん
「以前は、出汁の旨みは外国人に伝わらないといわれていましたが、日本文化の理解が進んだことで旨みを求める人が世界に広がっています。日本人にとっても、出汁だけを飲む機会は少ないので、異なる地域に宿泊してもらうことで味の違いを楽しみ、日本文化の奥深さを実感してもらえればと思います」


旅行のあり方を変え、日本の成長を支える

心に残る旅を経験すると、旅行はもっと楽しくなる。その体験が広がれば、人と出会う、知識に触れ発見する、自分の新たな一面に気づくといった価値がもっと注目され、ホテル選びの基準は大きく変わっていくかもしれない。

田口洋平さん
「ホテル選びの際、価格や駅からの距離を重視するのもひとつの方法です。特に出張はその傾向が強く、ホテルはただ泊まるだけの場所になりがちです。しかし、どのような旅行でも発見はあります。私たちは『Here Discovery Begins ──ここから見つける旅を』を掲げて、良い旅だったと感じていただけるようなお手伝いをしたいと思っています」

ホテルのあり方は、日本の成長を支える観光産業の活性化にもつながり、地方の魅力ある観光地の発展にも寄与してゆくだろう。

下嶋一義さん
「これまで日本の成長は自動車をはじめとする製造業によって支えられ、最近はアニメなどのソフトコンテンツも世界で人気です。一方で、旅行や観光もニーズが大きく、地方の魅力も高く評価されています。それらを資源として生かしながら、今後の日本の成長に貢献するビジネスにしていきたいと考えています」

KOKO HOTELSの進化は、まだ序章にすぎない。この先に、どんな旅行体験が広がり、化学反応が起きていくのだろうか? “ここ”から始まる楽しみは、これからだ。

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