コロナ禍に雇用を守るための助成金の不正受給疑惑。老舗高級旅館のオーナー会社が受給した額は1億円を超えるとみられています。告発が相次ぐ中、オーナーが語った言葉とは。

■「タイムカードを押すな」 雇用調整助成金を不正に申請か

北陸最大と言われる加賀温泉郷に建つ旅館「みやびの宿 加賀百万石」。創業1907年の老舗で、かつて昭和天皇も宿泊した。

224もの客室があるこの旅館で、「従業員を巻き込んだ不正が行われている」という情報が寄せられた。

村瀬健介キャスター
「広大な敷地に旅館が立っているのが分かります。この高級旅館の従業員に対して、『タイムカードを押すな』という、指示の貼り紙がされていたという証言が複数あるんです」

元従業員Aさんに話を聞くことができた。

元従業員Aさん
「僕自身もタイムカードを押すなと言われましたし、タイムカードを押す場所に『今日は押さないでくれ』『この部署のものは押さないでくれ』という張り紙がされたり」

口頭での指示だけでなく、タイムカードを押す場所には「タイムカードを押さずに直行」と書かれた貼り紙がされたという。Aさんが当時の上司に理由を聞くと…

元従業員Aさん
「『お前らの給料は“雇用調整助成金”で補償されているんだから、安心して働けばいいんだよ』と」

雇用調整助成金。会社の業績が悪化し、給料が払えなくなるなどして従業員を休ませた場合、休業手当を払う必要がある。会社が申請すれば、その休業手当分の金を国が助成してくれる制度だ。

コロナ禍で多くの雇用を守るため、国は申請に必要な書類を大幅に減らし、手続きを簡素化した。だが、従業員にタイムカードを押させず「休ませた」と偽り、本当は働いていた人の分まで国に助成金を申請していれば不正にあたる。

元従業員Aさん
「経済活動ができない中で、雇用を守っていきたいという企業の思いがあり、国も援助しているんだと思うんです。やっぱり僕としては許せない」

同様の証言は複数あり、中には旅館のオーナー=会長が指示をしていたという人もいた。私たちはその会長に話を聞くことにした。

■タイムカードを押すなという指示は「全くの嘘」

兵庫県・芦屋市の高級住宅街にある自宅を訪ねた。

ーータイムカードを押さないようにと会社側から指示があったとする内部証言が複数あるが、どうしてそのような指示をしたのか

金沢孝晃会長
「するわけがない。するわけがない!」

ーー会長に直接指示をされたと言っている人もいる

金沢会長
「全くの嘘!そんな馬鹿じゃない、私は」

金沢氏が会長を務める会社「ビッグ総合開発」は、加賀百万石だけでなく大阪や京都などでも多数のホテルを所有している。金沢氏は、全日本ホテル旅館協同組合の理事長も務めている。


金沢会長
「この歳まで商売してきて、社員に『雇用調整助成金をもらうから、お前たちタイムカード押すな』と、そんな馬鹿な経営者じゃないよ、私は。言うわけがない、そんなもん!」

ーー実際に働いていた人の分を申請したわけではない?

金沢会長
「当たり前でしょそんなこと!犯罪じゃないの、そんなことあったら」