いつでもどこでも動画コンテンツを楽しめる「定額制動画配信サービス」。スマートフォンの普及などにより、いまや国内の市場規模は5700億円を超えるほどに拡大している。(2023年推計 GEM Partners調べ)

近年、アメリカの動画配信大手の独壇場だったこの市場を切り崩しつつあるのが、日本発の『U-NEXT』だ。目覚ましい躍進を続け、国内のシェアは2023年に15%超にまで伸長。トップの背中が見えてきた。

「他社サービスと比較してもダントツのラインナップ」と胸を張り、国内市場シェア1位の座を目指すというU-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長CEOの宇野康秀氏に、ユーザーを満足させるための独自のコンテンツ戦略、そして企業として見据える未来について聞いた。

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■「ユーザーが見たいものが必ずある」 快進撃の鍵は“百貨店戦略”

宇野社長が動画配信事業を始めたのは、2005年。動画を視聴するためにはパソコンに専用の機器をつなげなくてはならなかった時代に、「専用機器は不要」で、しかも「利用料0円」という先進的な動画配信サービスをスタートさせた。その後、2007年に現在の『U-NEXT』を立ち上げ、時代とともに次々と立ちはだかる競合を相手に快進撃を続けてきた宇野社長。「やっと時代が追いついてきた」と実感しているという。

株式会社U-NEXT HOLDINGS 宇野康秀 代表取締役社長CEO
「外資系のプラットフォームは、オリジナルのコンテンツを制作し『どうぞこれを見てください』というやり方で主に動いてきていたが、私たちは『ユーザーが見たいと思うものが必ずある』という“豊富な品揃え”を重要視してやってきた。幅広いジャンルで、新作から旧作までとにかく多くの作品を取り揃えることで、“百貨店”のようなプラットフォームを作りあげた。ユーザーは『どこのプラットフォームなら自分の見たいコンテンツを見られるか』と探すので、結果『U-NEXT』にたどり着いてくれる、という流れができた」

株式会社U-NEXT HOLDINGS 宇野康秀 代表取締役社長CEO


豊富なラインナップを揃える“百貨店戦略”であらゆるユーザーを迎え入れ、他社との差別化を図った『U-NEXT』。

コンテンツの調達や編成の仕方も工夫していて、「コンテンツの目利きができるチーム」や「サービス内での見せ方を考えるチーム」をジャンルごとに配置した。市場、権利元、ユーザーを熟知した専門チームを各ジャンルごとに組織し、ラインナップの広さと深さを追求している。

こうした独自の強みを生かして成長を続ける中、2023年には『Paravi』と統合。その効果は、どのように現れているのか。

宇野社長
「統合によって、これまで弱かった国内ドラマやバラエティ、ニュース系の領域が一気に強化された。作品数やジャンルの幅がかなり広がったので、『旧Paravi』ユーザーと『U-NEXT』ユーザーのどちらにも、さらに喜んでいただけるようになった。安定的に良質なコンテンツを集められるメリットに加え、地上波放送で『U-NEXT』の名前を発信してもらえることも、長期にわたると知名度の向上に繋がるのではないか」

■国内市場シェア1位を目指し“ONLY ON戦略”でコンテンツの魅力を高める

ドラマやバラエティといった新たな武器と『旧Paravi』ユーザーが加わった『U-NEXT』は、年間経常収益が1000億円を突破。有料会員数は約433.9万人(2024年8月期 第3四半期決算)、動画の配信コンテンツは33万本以上(2024年7月1日現在)となり、国内サービス最大の動画配信プラットフォームとして確固たる地位を築いた。

※出典 GEM Partners 動画配信(VOD)市場5年間予測レポート


現在、国内市場シェアで2位を走る『U-NEXT』。中長期戦略として掲げる「国内市場シェア1位を目指す」という目標について、宇野社長は「すでに手ごたえは感じている」と話すが、目標を達成するには既存のサービスに留まらず、さらなる戦略が必要だという。

宇野社長
「今のような『オンデマンドで、ライブラリーにあるものが見放題』というコンテンツだけでは、市場が飽和状態になる可能性もある。新しい楽しみ方や、新しい市場を創造するサービスも計画していかなくてはならないと考え、徐々にスポーツや音楽にも領域を広げている」

さらに力を入れているのが、『U-NEXT』でしか見られないコンテンツを一定数設ける“ONLY ON戦略”だという。「この映画は、公開から1年間は『U-NEXT』でしか見られない」「新シーズンを楽しめるのは『U-NEXT』だけ」というような独占的な契約を結ぶことで、コンテンツの魅力を高め、競合他社との差別化を図っている。

■100社×100億=1兆円企業へ 進化し続ける組織

昨今、コンテンツ配信事業が注目されがちなU-NEXT HOLDINGSだが、店舗BGMやDX化推進の『USEN』をはじめとする店舗サービス事業や、通信・エネルギー事業、金融・不動産・グローバル事業まで幅広く展開している。

7月に発表された2024年8月期 第3四半期の決算では、売上高は前年同期比で17%増の2355億円、また営業利益は51%増の235億円と大幅増益だった。

足元の好調ぶりに満足しているかと思いきや、宇野社長が目指すのは「売上100億円の事業会社を100社育てる=1兆円企業」だという。現在、事業会社は26社。ここから100社にまで増やすにはまず100人の社長を作ろうと、「未来塾」という経営者育成塾を立ち上げた。宇野社長自ら塾長を務め、社内から集めた候補者に1年間指導している。

こうして「事業会社100社」を達成し、宇野社長が実現したいのは「顧客が必要なサービスをUSEN&U-NEXT GROUPの中で完結すること」だ。

宇野社長
「全く違うお客様のところで突然新しいビジネスをすることはあまり想定しておらず、私たちが現在やっている事業領域のお客様に向けて、より喜んでいただけるサービスを増やし拡充させていく。USEN&U-NEXT GROUPの顧客である飲食店や小売店、ホテル・宿泊施設や医療機関などが、現在全国に約85万店舗・施設ある。ここに対して、例えば求人ニーズに応えるサービスや、キャッシュレス決済サービスなど、店舗側が必要とするものをどんどん足していく」

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■宇野社長が見る“少し先の未来”とは

U-NEXT HOLDINGSは9月1日、グループ各事業の一部をサービス軸で再編する。機能を明確化することで、より機動的でスピード感をもった事業展開を実現し、グループ全体の成長拡大へ繋げていく。

常に社会の流れを注視して、会社の体制もそれに合わせ柔軟に変化させていくという宇野社長。

例えば今回の再編でも、グループ企業の1つを『USEN PAY』に商号変更し、店舗サービスの注力領域であるキャッシュレス決済サービスに特化する会社へと事業転換する。「一つの商品」を強化させていくためには、独立した「一つの会社」にすることで、キャッシュレス決済サービスをどうやって普及させるかをきちんと考えていくのが狙いだ。

常に目まぐるしく変わり続けるこの時代。それを先読みしながら、自分たちの力で未来を変えていくサービスやプロダクトを生み出していきたいと、宇野社長は目を輝かせる。

宇野社長
「少子化が進み、労働人口の不足が喫緊の課題なので、いろいろなサービスの自動化・省人化はもっと進んでいくと感じている。
キャッシュレス決済サービスも数年前は懐疑的に思っていた人もいたが、あるラインを超えた途端、当たり前のように伸びた。今は、配膳ロボットの販売に注力しているが、初めは『ロボットに配膳させていいのか』という考え方が主だった。今ようやく流れが変わってきたと感じているので、ここから普及までは早いと思う」

今年新たに掲げた“NEXT for U”というスローガンには、“あなたと世の中全ての人々の未来をより良くしていきたい”という想いを込めた。

常に少し先の未来を見据え、顧客や社会のニーズを見極めながら、U-NEXT HOLDINGSはこれからも柔軟に進化し続ける。

株式会社U-NEXT HOLDINGS:https://unext-hd.co.jp