スペインの名門サッカークラブ「FCバルセロナ」。
その独自のトレーニング方法を学べる場所がある。
サッカースクール「バルサアカデミー」。
東京や福岡など国内5か所で、6~12歳までの少年少女を対象に展開されている。
2024年の4月には6カ所目となる愛知校を開校する予定だ。
短期集中型の「バルサアカデミーキャンプ」も、夏休みなど学校の長期休暇に合わせて全国各地で開催されている。
かつてキャンプやスクールに参加していた小学生の中には、サッカー日本代表として活躍している選手もいる。

運営している「アメージングスポーツラボジャパン」の濵田満社長に、スクールやキャンプの強み、今後の展望などを聞いた。
「子どもの成長の流れで必要なもの全部を用意」
大きな強みは、スペインからの「サッカーの最先端」の方法を伝えられることだという。
濵田社長が同社を設立したのは2004年。FCバルセロナの日本公式ファンクラブの運営から始まり、グッズ販売や現地観戦ツアーの企画なども手がけるようになると、まさに転機となるオファーが訪れた。

「FCバルセロナのスクール部門のトップから、『日本でもスクールをやってみないか』という話があったんです」
スクール設立の前に、まずは単発のイベントから挑戦しようと、2007年から「バルサアカデミーキャンプ」をスタートした。
FCバルセロナの公式ライセンスを持つ外国人コーチが来日し、子どもたちに直接指導する。パスやドリブルのテクニックから、チームとしてどうボールをまわせば効率的かなどの戦術まで、「サッカーの最先端」を走ってきたバルセロナの技を、凝縮して伝える。

さらに、将来につながる大きなチャンスも用意している。キャンプでMVPに選ばれた選手は、現地バルセロナでのトレーニングに無料で招待されるのだ。MVPに選出されたのがきっかけで、FCバルセロナへの入団が決まった選手もいる。その頃からキャンプの人気が高まり、子どもの育成事業に力を入れるようになったという。
「スペインは昔からサッカーの最先端です。しかし当時は、スペインでどのように選手の育成を行っているのか、わからない時代でした。FCバルセロナとの交流を通して、日本の育成に足りないものや、今後こうなるだろうというものを”先取り”して持ってくることができるようになったんです」
キャンプは2~4日間ほどの日程で、これまでに北海道から鹿児島まで全国各地で開催してきた。
また、2009年に福岡で初の常設スクールとなる「バルサアカデミー福岡校」を開校した。現在は、福岡に加え、東京・奈良・神奈川・広島でもスクールを運営。この4月には新たに愛知校の開校が予定されている。
首都圏・関西圏では、単なるドリブル技術に特化するのではなく、自分の体の動きに合わせた最適な形でのドリブルの習得を行う、「ドリブルにおける動作改善スクール」にも乗り出す。このほか、サッカー留学のサポートや、海外クラブチームを招いた大会の企画など、11もの事業を展開している。
「事業が全部連動しているんです。例えば、小学生向けのサッカースクールは6年生で卒業しますが、卒業生から『中学生版を作ってもらえませんか』と言われて、中学生版を作る。そのうち海外に行きたくなる子も出てくる。そういう、子どもたちの成長の流れの中で必要となってくるものを、全部用意していくやり方をしています」
「賢い選手」を育てる
鍛えるのは、サッカーの技術だけではない。
濵田社長自身も、高校までサッカーに打ち込んでいた。しかし“納得感”がなく、「やりきった」と思えなかったという。子どもたちにそんな後悔をさせないために、大切にしている方針がある。
「まずサッカーを好きになってもらうところから入って、賢い選手を育てるという方針でやっています。上手くなるためには、好きであることが一番いいですよね。好きだったら、上手くなれる方法を考えますよね。立ち位置はこうした方がよりパスを受けやすいとか。いろいろな方法の中で、自分はこの方法論が伸びるだろうとつかめた人は、たぶん社会人になってもつかめるんですよ」

濵田社長が指す「賢い選手」は、「自分の最高のパフォーマンスを出すにはどうしたらいいか」を自分で考え、応用できる選手。その方法を、好きなサッカーを通して見つけてもらおうというのだ。
FCバルセロナのトレーニング方法には、パスの受け方、そこから次のパスやシュートへのつなぎ方など、一つひとつに「最先端のロジック」があるという。
そのロジックを伝えた上で、子ども自身が周囲を観察して、瞬時にいろいろなことを考えながらプレイすることは、「人としての成長そのものに直結する」と話す。
「サッカーが上手くなるだけじゃなくて、論理的思考力や判断力が鍛えられます。サッカーでも仕事でも、次の一手、その次の一手、また先の一手が読めれば読めるほど、活躍できます」
将来、どんな仕事を選んでも通用する「考える力」を、サッカーを通じて鍛える。その教育的な価値に共感して、スクールやキャンプへの参加を決める保護者も多いという。
サッカーに打ち込める「施設」がカギ
濵田社長は、今後の発展のためには、「自前の施設を持っていること」が重要だと話す。
「自由にトレーニングを行える施設がなければ、場所を借りなければいけませんが、希望の日程で借りられなかったりして好きなように使えません。施設は投資額が大きいので、なかなか自分で作れませんが、調達した資金をどのように”施設に投資”するのか、そのマインドを持っているかが重要だと思います」
その上で、キーワードとするのが「エンタメ化」だ。

「サッカースタジアムを作って、月2回サッカーの試合をして、ほかの日は貸し出したとしても、それだけでは使いきれていません。サッカースタジアムを作るという考え方を持つよりは、『エンタメ集客施設』を作って、そこにサッカーグランドも併設されているという考え方で取り組まなきゃいけないと思っています」
濵田社長は、2020年からはJリーグに加盟するプロサッカークラブ「奈良クラブ」の代表も務めている。奈良は出身地でもあり、今後はサッカー業界で働きたい人がグローバルなサッカービジネスを体系的に学べるサッカー専門学校や、天然芝併設のトレーニングセンターを作って、地域を盛り上げたいと話す。
そこには、サッカーで活気づくバルセロナへの思いがある。
「サッカーの聖地」と言われるスペイン・バルセロナのスタジアム「カンプ・ノウ」。約10万人を収容するヨーロッパ最大のスタジアムが満員になる光景を目にした濵田社長は、「人口160万人ほどの街で、その5%ほどにあたる約10万もの人が訪れる」ことが強烈に印象に残ったという。街全体でチームを応援することが文化として脈々と根付いているのだ。奈良でもFCバルセロナの価値観で、少しずつ実績を積み上げていくことで、サッカーで活気づく街になることを夢見ている。
FCバルセロナの、最先端のトレーニングを届ける。その先には、トップ選手の育成や日本サッカーの発展はもちろん、子どもたちひとり一人の将来の活躍や、地域の活性化までもが描かれていた。

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