傷つくオキちゃんから、子の亡骸を受け取るために

1990年5月、5回目の出産も死産になりました。長﨑さんはこのとき、亡骸を強引に回収することをやめ、1人でプールに降り、10メートル以上離れたところでひざまずきました。

「オキちゃん、赤ちゃんを奪いに来たんじゃないよ」

声をかけ、餌を与えながら、ゆっくりと距離を縮めました。殺気立っていたオキちゃんの目が、何度か語りかけるうちに穏やかないつもの目に変わった瞬間を、長﨑さんは今でも鮮明に覚えています。

「もらっていくからね」

赤ちゃんをゆっくりと抱きとりました。このとき、長﨑さんの顔はオキちゃんの鋭い歯のすぐ横にありました。

何度も子を失い傷ついたオキちゃんとの日々を振り返る長﨑さん

「もしオキちゃんが気持ちを変えて噛みついてきたら、私は大けがをしていたはず。でも、オキちゃんは攻撃せず、私に赤ちゃんを託してくれました」

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しかしそれでも、オキちゃんの心に刻まれた恐怖と不安は消えませんでした。6回目(1993年11月)の出産でも、元気に生まれた赤ちゃんをオキちゃんは自ら殺してしまいました。問題はどんどん深刻になっていきました。

表舞台での活躍からは想像もできない辛い経験を重ねた

「オキちゃんが妊娠しても嬉しくなく、かえって憂うつだった」

「飼育している僕としては、とてもつらい。 イルカを飼うのをやめたいと思っていた。それくらい、つらかった。それをなんとかクリアしたい。 これは、僕の水族館人生の大きな目的だと思っていた」